今日は久々に何も予定がない日。
家でぐーたらしていると、母が帰ってきて、お遣いを頼まれた。

両親の離婚調停は、母の希望に近い形でまとまろうとしている。今、父抜きで3人(+1匹)暮らしている実家は、売りに出されることになった。私たちは母の実家に転がり込むことになりそうだ。

家を売る委任状とか電話番号譲渡のサインを、父に貰わなければならないとのことで、
私が父のいる父の実家へ、書類を届けに行くことに。母が行ってもいいのだろうが(というか本来母が行くべき)、父の実家には舅がいるし、気まずいのは分かるから、ふたつ返事で引き受ける。

父の実家は同じ区内なので、自転車を飛ばしてびゅーんと。
久しぶりにおばあちゃんにお線香をあげ、おじいちゃんにお茶をもらって、久しぶりだねとおしゃべりをする。

父とは、今週内定式があるんだ、なんて一言二言会話をし、
ここに名前書いて、実印押して、と用をとっとと済ませる。


両親の別居が始まってから、父との会話はどこかぎこちなかったが、今日もそんな感じだった。
ただ、久しぶりに会ったので、父もおじいちゃんも、懐かしそうな顔をしてくれた。
そんな顔をするなら、父にはもっと父親らしくあってほしかったなと、ふと思う。でも、もう遅いのだ。

帰り際、おじいちゃんが
「また遊びにおいで」と言った。こんなことをおじいちゃんが言うのは珍しい。「うん」と笑顔でこたえ、しわしわの手に握手をする。頑固一徹という言葉がぴったりのおじいちゃん。昔かたぎで、口が悪く、男尊女卑で、どこか私たち孫を寄せ付けない雰囲気を持っていたおじいちゃん。でも、本音はこうなのだ。


玄関外まで送ってくれた父に、どんな顔を見せればいいのか分からず、よそ行き用の顔で、「じゃあね」と言って自転車に乗る。
まだおばあちゃんが生きていたころ、よくみんなでご飯を食べに行ったファミレスあたりを通る。もうそのファミレスもなくなってしまったのだが。

その頃から、夫婦仲は最悪だったらしいが、できることならあの日に戻りたい。
父がもっと大人で、母がもっと柔和な人だったら、何か変わっていたのかもしれない。
眺める懐かしい景色は、そんなことを思わせる。
でも、もう遅い。