私の「好き」がひとつ、終わった気がするんだ。恋とか愛とか、そういうくすぐったい言葉じゃなく、ただ心から「好きだなあずっとこうしていたいなあ」と思えた、あの人。

タバコを吸いに外へ出たあの人の後を追えば、ふたりきりになって何かあるかもしれないと、悪い自分がはたらいた。

案の定この間みたいにキスの雨を受けながら、私はこの人を利用しながら満たされる。

しかし違ったんだ。利用してるのはあの人も同じなんだ。そんなの前から分かっていたことじゃない。

本当に好きだったから、都合の悪いことは頭から消えていた。本当にバカだ私は。

翌日、彼女との話を自慢されて、現実に戻って。本当に何気ない一言だった。俺たち普段こうやってデートするんだとか言ってた。

あの人の中に、私という存在がないことを思い知らされる。いや、そんなこと、分かっていたはずなのに。

ぽっかりと、悲しくなって、私はこの人を本気で好きになっていたんだと、いつか私を選んでくれる日がくるんじゃないかなと、バカな考えを巡らせていた自分に気がつく。

なんてバカバカしい。そもそもあの人は彼女しか見えてないんだよ。

背けていた現実が突き刺さり、ああこれって失恋ってやつだ、勝手に好きになって勝手に失恋しちゃったんだと気づいた。

同時に、本気で好きになれる相手がほしいと思った。私という存在を置いてくれる人に、愛されたいと思った。

結果としてTではなくあの人に惹かれたのは、やはり人として尊敬できる部分を持っているからで、やさしい気持ちにさせてくれる人だから。この人みたいになりたいって、思ったから。

でもそう簡単に会えるわけでもなかったから、充足を他に求めた。

なんかもう、こういう汚くて寂しいだけの自分はやめたいと思った。今まではそんな自分でも充たされてればそれでいいじゃんと本気で思っていたけれど。変わりたい。