続・音楽とセックス

8月1日夜、幼なじみと一緒にいるとき、私の電話がなった。
「Tだよ!!!!」幼なじみの言葉に、反射的に電話を取る。私はたばこを吸うことに夢中で全く気づかなかった。

そう。元彼Tからの電話だった。
「明日ひま?花火いかへんか?」
これは・・・またとないチャンスだ。
しかし私はその日すでに予定があった。社会人の先輩たちと、ROCK IN JAPANフェスに行くのだ。(またしてもフェス)
そのことを言うと、諦めモードの彼。
私は、フェスだって行きたいし、彼と花火だって見たい。どっちも取ってやりたい!!(だって夏だから)

結論から話すと、早朝から昼間でロッキンに行って、特急で東京にとんぼ返り、江戸川の花火に行きました。
ものすごいハードスケジュールだったけれど、念願のSOIL & "PIMP" SESSIONSのライブで発狂できたし、久しぶりに会った先輩とはいろいろ話せたし(主にTのこと)、少ない時間ながら実りあるフェスだった。

特急で東京に帰る間はできるだけ寝て、彼との待ち合わせ場所まで。この間彼の家に押しかけたのが別れて半年後だったから、次もし連絡をとるなら、また半年待とうと勝手に思っていた。それがこの短期間での連絡→花火デート。期待しても、いいですかー。
ごく自然な流れで2人並んで歩き始めるが、それ自体にぎこちなさを感じたのは私だけか。

江戸川の花火大会には、私たちが付き合っていた頃、彼の友人たちと見に行ったことがある。だからなんだか懐かしい。
彼がレジャーシートを持ってきていたので、それを敷いて二人で寝転がる。いつの間にか手を繋いでいて、身を寄せ合いながら、花火を見た。とてもきれいで、大きな花火が上がるたびに、そこら中で歓声があがった。

帰り道、彼は私の手を離そうとしなかった。なにかの拍子で手が離れてしまったり、荷物の関係で手が離れてしまうことがあっても、まるで中学生のカップルみたいに、その都度手を繋ぐことを求めてきた。彼がこんなに手を繋ぐことに執着するのは初めてで、だから少し戸惑った。
駅まで歩く道すがら、「お腹が空いた」と私。そういえばハードスケジュールだったから朝から何も食べてないや。
帰りにどっかでご飯食べようと提案すると、「そやな」と言って黙ってしまった。しばらくして、私の手を握る彼の右手に、力が入るのがわかった。彼は、何か重要なことを言うとき、手に力を入れたり、咳払いをしてから話し始める癖がある。それを知っている私は、これからおとずれる何かに、少しばかり覚悟をする。

「うちくるか?」
私は、私が持っている中でも、本当に嬉しいときにしか使わない笑顔で、その言葉に答えた。
帰りは2人ともぐったりで彼の住む街まで戻って、まっすぐ彼の家まで。どこかに寄る気力もなく、彼の家でお弁当を食べた。
すると彼が私の後ろに座り、ぎゅっと抱きしめてくる。「ご飯食べられないよ」と言う反面、私は幸せを噛み締める。

「どうして今日誘ったりしたの?」
確か前回私が部屋へ押しかけたとき、彼は私に「好き」の一言をくれなかった。だから私は何も期待していなかった。
「こないだお前が来たやろ、あれでな、自分の気持ちに歯止めきかなくなってん」
ずっと、気持ちを抑えてきたということなのか、私は、あの日から欲しかった言葉をねだる。
彼は、何度も何度も、その言葉をくれた。それは元々私がねだったものだったが、彼の本心であることは、明らかだった。幸せだった。想いが通じ合って、こんなに幸せだと思ったのは久しぶりだった。

気持ちの上では通じ合った。しかし、私たちがいわゆる「付き合う」という形をとることは、しばらくない。というか、もうないかもしれない。彼には、「好きだけど、付き合うことはやっぱりできない」と言われたし、それは覚悟していたし、でも、私が好きなんだから離れられるわけでもないし、

「これからも会ってほしい」と言われれば「もちろん!」と思っている私がいるし、これって世に言うセフレ状態だな、と思う。彼にとって、これはセフレではないのだと言うが(セフレには気持ちがないが私には恋愛感情があるから違うのだという)、理解したい反面、世間的には「付き合ってないけどやることやってる」という事実がセフレと見なすだろう。

まあどちらでもいい。私は彼を愛してるし、心から応援したいと思うし、彼もまた、私を愛してくれているのがわかったから、私はそれで十分。

朝方まで起きて、そのまま始発電車に乗る。早朝の飛行機で彼は実家に帰った。つかの間の夏休みらしい。

あれから連絡は取っていないが、また近々会えそうな気がする。もし会えなかったとしても、私はこの充たされた気持ちでしばらくは生きていけそうな気がする。