くるり先輩
くるり先輩は、私が中高時代に所属した部活の先輩で、私が中学3年のとき、確か高2で幹部をされていた。
部活というのはギターの弾き語りをする部活で、軽音部のないうちの学校で唯一、ロックが好きな生徒が集まる場所だった。
くるり先輩は当時まだブレイクしていなかったくるりの追っかけで、
「くるりはいいよ!絶対売れるから!」
が口癖だった。
私をふくめ当時の部員たちは「くるり?変な名前」くらいにしか思っていなかったけれど、
くるり先輩が弾き語りする、『東京』という曲は、コードがとても心地よくて、素敵な歌だなと思っていたことを覚えている。
高校2年の秋、私は人生で一番楽しい時期を過ごしていて、その頃聴いていた曲の中に、くるりの『rock'n roll』がある。くるり先輩の予言どおり、くるりはこの曲で大ブレイクを果たした。
フジでくるりを見たとき、そんな思い出がふとよみがえった。
盛り上がりが最高潮に達したとき、『rock'n roll』のイントロが。
意識に反し、目頭が熱くなった。
くるり先輩のことを思い出した。部室を思い出した。おしゃべりに華を咲かせてギターをかき鳴らしたことを思い出した。
次はなんだ、なにがくる。それも聞き覚えのあるイントロ、『東京』だった。
涙が出るのに、時間はかからなかったと思う。
きっと今頃、くるり先輩もどこかで喜んでいるに違いない。あのくるりが、今フジのステージに立っているのだから。
私はこの日、夜が更けるまでこのノスタルジーに浸った。