彼氏と別れて1週間経った。
この1週間、私はいつもの生活を送っていた。いつもの、忙しい生活。


お互い納得の上での別れ。頭では理解しても、その夜ふとつぶやいた言葉は、彼の名前だった。


別れが決まった瞬間、私たちは自然と昔の関係に戻れていた。まだ付き合う前の寒い季節を思い出した。
いろんな話をした。実は私が、彼の友達に気に入られていたということ、アニメの話、バイクの話、将来の話。


あれ、彼って、こんなによく喋る人だったっけ。こんなに優しい顔をする人だったっけ。


別れる前の日、彼はケツメイシの『わすれもの』を聴いたと言っていて、少し切なかった。*1



次の日、貸していたCDを返すと言われ、呼び出された。
しかしそれは口実で、「もう一度やり直したい」と言われた。
「お前がいなきゃあかんねん」と言われた。
「好きや」と言われた。キスをした。


揺れないわけがなかった。二つ返事で戻りたい気持ちはやまやまだった。
でも、ここで戻ったところで先は見えていた。
連絡のこない日々が続き、義務のように週末を2人で過ごし、また2人別々の日々を送ることくらい、私にはわかっている。
その度に孤独になって、まぎらわせない寂しさを抱えることくらい、私にはわかっている。


彼をなだめ、「彼女として傍にいることはできない」と言った。
仲のいい友達でいたかった。でも今の彼に、それは言えなかった。



数日後、「もう大丈夫」というメールがきた。
翌日、私も彼にかりていたCDを返すため、彼の大学に行った。
久しぶりでもないのに、ずっと会っていない気がした。
少し喋ったけど、彼の口数は少なかった。


それ以来彼と会ってはいないが、1度彼からメールがきた。
付き合っていたときも、こうやってたまに連絡をくれればよかったのに。


彼氏と別れて寂しい気持ちになる私と、冷静に彼を分析する私。
一体私の気持ちはどこにあるんだろう。


合鍵がなくなったせいで、鍵の束が少し軽くなる。
今の私の心持と、たぶん一緒。

*1: ちなみに、その日私は椎名林檎を聴いてノリノリだったというのは、秘密である。